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クローン病&潰瘍性大腸炎通信-<2>

前回は潰瘍性大腸炎とクローン病についての最近の知見について総説しました。少し、専門的な話になってしまいましたが、免疫学的立場より研究している我々の基本的な考え方を知っていただきたかったことと、原因不明ではありますが、かなりの部分で少なくとも病態は解明されつつあることを知っていただきたかったのです。今回は、昨年より登場した新しい薬であるペンタサについてお話しします。

5-アミノサリチル酸・メサラジン (ペンタサ)について  平成8年6月に薬価収載されたペンタサ錠は、メサラジン(5-ASA:5-アミノサリチル酸、サラゾスルファピリジン salazosulfapyridine (SASP) サラゾピリンRの有効成分)を、徐々に放出するよう製剤設計に工夫を施した経口放出調節製剤です。5-ASAを直接経口投与すると小腸上部で速やかに吸収され、病変部に有効量が到達しません。ペンタサ錠は、5-ASAをエチルセルロースで被膜した顆粒を、賦形剤を加え錠剤化し、小腸での吸収を抑え、かつ5-ASAの形で小腸および大腸に放出するように工夫した経口放出調節製剤です。 潰瘍性大腸炎においては、わが国で行われたSASPと5ーASAとの二重盲検群間比較試験では、臨床症状と内視鏡所見での改善度に差はなく、副作用(安全度)も含めた全般有効度は5ーASAが優れていたと報告されています。クローン病においては、SASPは小腸型ではほとんど効果がみられないのに対し、5ーASAの有効性を示唆する成績がありますが、有効性を確認するためには今後、多数症例の検討が必要であると思われます。 国内での臨床試験の結果、副作用発現率は約10%で、主な副作用は、嘔気、嘔吐、腹痛などの消化器症状、発疹、丘疹などの皮膚症状、GOT、GPT上昇などの肝機能検査値異常で、いずれも軽度であり投薬中止により消失しています。 SASPは、5-ASAとキャリアーであるスルファピリジン(SP)が結合した構造を有しており、服用後大腸で腸内細菌の酵素によって有効成分である5-ASAとSP に分かれ、SPは副作用の主な原因と言われています。よって、SASP不耐性の患者(副作用などでSASPが服用できない患者さん)でも5ーASAは使用可能で、20例のSASP不耐性の患者における副作用の発現率は、2例(10%)のみで、しかも軽症でした。 5ーASAの主な作用機序としては、マクロファージや好中球などの炎症性細胞から放出される活性酸素の消去やロイコトリエンB4(LTB4)の生合成抑制作用が考えられています。通常、成人にはメサラジンとして1日1500〜3000mg を3回に分けて食後経口服用し、年齢・症状により適宜減量されます。

私見ですが、潰瘍性大腸炎の患者さんでこれまでSASPにて副作用もなく、良好な経過の方が、あえて5-ASAに変更することはないと思いますが、初めて服用される方、SASP不耐用の方には5-ASAは投薬しやすいと思います。小腸に病変を有するクローン病の方にはこれまでの薬物療法に加えるうる薬であると考えます。

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