外来の裏話

カルテNo,29 ガンの連鎖反応は医療費の無駄

患者
32才の主婦
主訴
胃ガンかも知れない
ストーリー
月曜日の朝「祖母がガンで入院したので調べて下さい」と言って来院.「症状がないと保険はききませんが」と言うと「何となく最近胃がたれまして......」と続く. 「胃ガンだと思いますので先生,胃カメラで調べて下さい」 診察が終わり,「調べる必要はなさそうです,昨年の検査でも異常はなかったでしょう?」
考察
月曜日は土日の患者さん三日分が集まるので一番混む. この間に地方へお見舞いに行ってガンの家系とか色々親戚に言われて昨日は眠れずに 来院し,すっかり精密検査を受ける気になっている. 不安の程度によっては検査をするが,殆どは異常が見つからない. 身内でなくとも親しい友達とか知人がガンと診断されたり,死んだりするとさらに大変. 日頃,病院嫌いと言う人までもが心配でぞろぞろでて来るから不思議である. 中には医学書を読んだらガンの症状と一致したとか昨日のテレビの番組で云々となると 問題はさらに深刻で手がつけられない. こちらも万が一,本当にガンだったら大変と検査を進めないわけにも行かない. 医療収入を考えても検査へと進めるのが一般的である. 検査を断ると,どうせ何にも検査してくれないと陰口言われるか,他の病院へ行くに決まっている. 少なくとも検査の必要性の有無は医師に任せて貰えないだろうか? あやまった検査項目と診断名を指定して来るので一番困る.