外来の裏話
カルテNo,35 母が病気
- 患者
- 5才の男児
- 主訴
- 熱が下がらない
- ストーリー
- 鼻が悪いと言われ,耳鼻科に通院していたが熱が下がらず近くの小児科の受診を勧められる.血液検査の結果,炎症反応を示すCRPが4.6と高値であった.
検尿の所見でも潜血反応が認められ担当の女医から「何らかの感染が疑われる」「抗生物質は止めて熱を記録して下さい」「CRPは感染の他癌でも高いことがある」などの説明を受け,びっくりして来院.
一日に3カ所も医院通いの事もある.
「癌の可能性は全くない」と何回も説明するも母親は納得しない.
やむを得ずもう一度採血し,帰宅させた.
数日後,子供の病気は完治するも,母親の精神的な不安定は続き,母親に対し精神安定剤が処方された.
- 考察
- この子は気の毒である.
風邪引いただけであちこちの病院に振り回され,好きな幼稚園にも行かれない.
この子は大きくなったらマザコンになることの危険性すらある.
特に母親には説明に気をつけていたがこの女医さんはこの母親のこの病気への異常な神経質ぶりを知らず一般的なこととは言え,禁句の言葉を言ってしまったのである.
医者を信じていないのではなく,明らかな子供の病気への過剰反応である.
他の患者さんより5倍は時間がかかる.
殆どの時間は子供の診察より母親への説得時間であり,母親の病気である.
子は元気でいるのに大好きな幼稚園は休まされ,母親は食欲も失い,不眠症に悩んだりの異常な状態が続く.
育児ノイロゼ-で時々3面記事を賑わすタイプでもあり,やっかいである.
この子は気の毒である.この母はさらに気の毒である.多分この父も気の毒である.